夜明けの星10

一夜明けてベッドから起き上がったノウはそわそわとシェスの姿を探した。
ノウとの予定が入っていなければ朝日とともに眠りにつくシェスは、蝙蝠姿で机の上で丸まっていたり、天井に設置された止り木のようなものにぶら下がって眠っていることが多いのだが、今日はまだ起きていたらしく人の姿で針を動かしていた。
こちらに背を向けていて、ノウが起きたことにはまだ気づいていない。

 

(………あっ!)

 

しゃらっと広がっていた白銀の髪がきゅっとひとまとめに結ばれていることに気づいて、次いで髪をまとめているそれが自分が送ったものだと気づいたノウはパアッと顔を輝かせた。

 

「あ、あの、シェスさん、おはよ…!」

 

無意識に弾んだ声にシェスがこちらを振り向くと同時に白銀の髪と緑のガラス玉がついた髪留めが揺れる。
それだけでノウはとても嬉しかった。

 

「おう。おはよ」
「え、えへへ…。それ、つかってくれて、ありがと…」
「もらえるもんはもらう主義だからなァ。まっ、せっかくだから使ってやるよ。…くく、熱烈なラブレターありがとよ、ひよこちゃん」
「ら、ラブレター!?ちがうよ、ラブレターじゃないよ!?も、もう!!すぐそういう言い方するのよくないとおもう!!」
「いやー、感激のあまり灰になるかとおもったぜ!」
「ううう!も、もう!!…あ、あのねシェスさん。もう、朝だよ。まだ起きてるのめずらしいね?」
「…あ?もうそんな時間か。じゃあ寝ちまうかな」
「なにしてたの?」
「バンダナを繕ってたんだよ」
「いつも、シェスさんがつけてるやつだ」
「そうそう」
「………おれもバンダナほしいなあ」
「アア?なんで?」
「えっ、な、なんとなく…。シェスさんがいつもまいてるから…」
「なんだそりゃ」

 

シェスは額に黒いバンダナをよく巻いていた。
いつからつけているのかわからないが、丁寧に何度も針を通してほつれを直しているのできっと大事なものなのだろう。

 

「シェスさん、そのバンダナたいせつにしてるね」
「…別にそうでもねぇよ。だいたい、こりゃあ、あれだ。三代目ぐらいだしなァ」
「三代目?」
「色あせたり、ゴムが伸び切っちまったり、布自体が擦り切れたら流石につかえねぇだろ。なるべくぎりぎりまで使うようにはしてるけどな。だめになったら別の布を買ってきて自分で新しく作る」
「そうなんだ」

 

吸血鬼は人と時間の流れが違うことを、ノウは知っている。
厳密に言えば、時間が流れてすらいないのだが、シェスはそのことをはっきりと口にしなかったし、ノウも尋ねなかった。
直せるものはできるだけ直して使うシェスでも、修繕が追いつかないぐらい時間が経ったものは流石にどうしようもない。
だから似たような布を見繕って、中にゴムを通して作り直すのだ。

 

「バンダナまくのすきなの?」
「……べつに」

 

昔、まだシェスが子供だったころ、病床についていた誰かが、外を駆けずり回ってたまに頭をぶつけるシェスに困ったようわらいながら「はしりまわるぐらいげんきなのはいいけど、おでこを切ったらあぶないよ。せめてこういうの巻いたら」と差し出してきたものをつけたのが最初で。
やがて冬を越せなかった彼の形見がわりに成人したあとも似たような色のバンダナを頭に巻いていただけだ。

それからずっとなんとなく、似たようなものを繕ってつけているだけ。
それだけだ。

 

「今日もお休み?」

 

言葉少なになったシェスに何かを感じ取ったのか、ノウはそれ以上話題を掘り下げるのをやめシェスに今日の予定を尋ねた。

 

「いーや?そろそろ依頼を受けるぜ。金が心もとなくなってきたからな」

 

シェスはノウと依頼を受けてないい日でも単独で内職をしたり依頼を受けて小銭を稼いでいたが、日々生きているだけでお金を言うものは消えていくのだ。
羊皮紙に日々の出費を書き連ねていた結果、そろそろ依頼を受けたほうがいいのがわかったのである。
毎日生活費を計算して工面する日々。
独り夜を生きるようになってからは遠のいてしまった習慣の一つだ。

 

「お、おれがやさいとかたまごとか買いすぎちゃった?」
「ばーか。お前の小遣いで工面して買ったもんは計算に入れてねぇよ。たまに変なもん買うのはどうかと思うけど?」
「そ、そんなことないもん」
「ほー?じゃあなんだろうな、あれ。みろよ。あそこに?俺の?見知らぬ壺が増えてるんだよなァ!」
「あ、うう…!ごめんなさい~っ!!」

 

部屋の角に置かれている壺をシェスに指さされてノウがぴゃっと肩をすくめる。
いつだったか買い物にでかけたシェスがノウから少し目を離したすきに、商人に押し売りされた壺だ。

至極ふつうの壺である。
その癖あきらかに相場より高い値段でかわされていてシェスからすれば腹立たしいことこの上ない。

返品しようにも押し売りした商人の顔はノウしか知らない上に、件の商人はいつのまにか売り場から姿を消していたのだから頭が痛い。

 

「食材はまあ、いい。装備品、依頼で使う消耗品もいい。必要なもんだからな。多少懐に余裕があるときは趣味に使っても、まあ許す」
「はい」
「けどなァ!壺は場所取るだろうが!!使い道もたいしてないんだよ!!お前はなんだ?壺でなにか育てんのか?花そだてて、花屋さんにでもなんのか?んん?それとも壺の中に入る趣味でもあるのかァ!!」
「あああうう、ごめんなさい、ごめんなさい~~!」

 

無駄遣いを嫌うシェスはいつものこびりついた笑みに怒気をにじませてノウを小突きまわす。
壺集めが趣味だといえばもしかして許してもらえたのだろうかと思ったが、自分の辿々しい反論などシェスは即座に論破してしまうに違いない。

 

「あああーううーー!!い、依頼!依頼、何、受けるの!?」

 

このままだと、今日一日壺を買ってしまったことを責められかねないので、ノウは取り繕うように話題をそらした。

 

「アアン?…まー、そうだな、昨日見た依頼書でめぼしいのは三つだな」

 

ノウのあからさまな話題転換に仕方なく乗ってやりながらシェスがすっと指を立てる。
現在のノウの実力を加味して妥当なのは三つ。

 

(もう一個、気になる依頼っつーか、注意喚起っぽいもんがあったが、ありゃあ、まだひよこちゃんには無理だろ)

 

掲示板の重ね張りされたたくさんの依頼書の上に貼られた紙にかかれていた内容を思い出す。
この街から少し離れた森の奥で普段見かけない妖魔が姿を見せたそうだ。
熟練の冒険者パーティが応戦したが、討伐まで至らず逃してしまったと書かれていた。
ちなみに対応したパーティに死人はいないものの、全員が満身創痍で現在も治療院で手当を受けているらしい。
妖魔は手負いの状態で森の奥をさまよっている可能性があるので、しばらくその方面は駆け出しの冒険者や一般人が立入禁止になるのだろう。
改めて討伐依頼が貼り出されるのか、それとも件の妖魔がどうなったかまずは調査依頼が貼り出されるのか。

 

(手負いの大型妖魔、ねぇ…。トロール、オーガ、ミノタウロスあたりのどれかか?そこまでいくと俺も面倒だな)

 

告知の紙に書かれていた内容に虚偽がなければ、大型の妖魔は単独行動だったようだ。
ゴブリンの上位種に屈強な体格を持つ種がいるが、あの系統は基本群れで行動するため可能性は薄い。
シェスが見たことがある大型の妖魔で単独行動が多いのといえば前述した三種類だった。
他にもいるかもしれないが率先して大型妖魔を狩っていたわけではないので、今のところ思いつくのはそれだけである。

手負いの獣ほど危険なものはない。
生存本能が恐怖を上回り、凶暴さと攻撃性が増すからだ。
そこに飢餓が重なれば最悪である。
昔気まぐれにうろついていたころ、一体のオーガに喰い散らかされた村の跡地をみたことがある。
人だった頃に目撃していたら、胃酸が逆流したかもしれない惨状だった。
どうやって倒したかあまり覚えていないが、とりあえずオーガの血はあまり美味しくなかった気がする。
つまるところ、オーガなら倒したことがあるので油断しなければやられるとは思わないが、それは自分一人でかつ人としての体裁を保っていなかったらの話だ。

 

「一枚ずつ教えてやるからちゃんと聞けよ?」
「うん」
「まず、魔術師がうっかり増やし過ぎちまったスライムの駆除」
「…魔術師のひとってどうしてスライムたくさん増やしちゃうんだろうね」
「検証狂いが多いんだろうよ。自分が興味ある分野を解明できるなら、あとの被害なんて考えちゃいねぇのさ」
「そうなんだあ」

 

魔術師に対する偏見である。
実際探究心が道徳心を上回っている者も確かに多いが、そうでない魔術師からすればたまったものではないだろう。
しかしこの場にいるのは魔術や魔術師に馴染みがないシェスとノウの二人だけなので、その偏見が誰かに訂正されることはなかったのだった。

 

「次が村の作物を荒らしまくるワイルドボア退治…」
「いのししさん。いのししさんは困るね…っ」
「なんだ、故郷でひどい目にあったことでもあんのか」
「なんどか…。あと狼さんににわとりたちが食べられたり」
「そりゃあ、死活問題だろうなあ」
「うん、だから柵つくったり、自警団の人がみまわりしてくれてたよ」
「ふーん」

 

農作物や畜産で生計をたてている村からすれば、作物に被害がでるのは恐ろしいことだろう。
下手をすれば人里におりてきた野生動物が家畜や作物だけでなく人間を襲うことだってある。
猪や狼だって妖魔ほどでないにしろ、ただの人間にとっては脅威だし、子供や老人であればいともたやすく命を刈り取られてしまうことも珍しくはない。

 

「あとは、街道のはずれにでる低級ゴーストの浄化」
「ゴースト…!」

 

他の二枚と毛色が違う依頼内容に、ノウが背筋をピンと伸ばした。
そういえばゴーストやゾンビ系の討伐はまだ経験させていなかったことを思い出す。

 

「なんだ、お前。幽霊が怖いタイプかよ」

 

にやにやと嗤いながらノウをからかう。

 

 

 


――目の前に似たようなのがいるだろうに。

 

 


そんなシェスの声にならない言葉はノウには届かない。

 

「そそそそ、そんなことないよ!」
「声がひよこみたいに震えてるぜ~?」
「ひよこじゃないもん!だ、だって、剣じゃおばけは切れないよね…?」
「切れる」
「えっ!?」
「聖水を剣に浸しゃあ、肉体がなくとも低級ゴーストなら切れる。あとはそうだな、聖気を纏えるんなら、拳でもぶん殴れる」
「そうなんだ。えっ、拳…?素手??えっ…??」
「素手で、拳」
「ええ~…?」
「お前、信じてねぇな?」
「だ、だって…」
「そういうやつもいるんだよ」

 

厳密に言えば、いた、だったが。
シェスの脳裏をよぎるのは、父のように慕っていた誰かの後ろ姿だ。
神父服がはちきれんばかりの体格を持っていた彼は、聖句を唱えながら低級ゴーストだろうが、ゾンビだろうが、問答無用で殴り飛ばしていた。
規格外すぎる神父だった。
正直意味がわからない。


(もう、いねぇけどなァ。なにせ、俺が、――――した)


ジクジクと見えない何かが焼け爛れて落ちていくような感覚を意識の底で握りつぶして嗤う。

 

(―――様だったら、退治できた、だろ)

 

「ゾンビとかグール系の肉体あるやつなら、もっと効くぜ。切った部分が焼け爛れてよう、じゅくじゅくと音を立ててぼとりと。しばらく肉料理食えなくなるようなそりゃあもうえげつな…」
「わー!わー!!やめて!やめて!!」

 

想像してしまったのか、耳を両手で抑えて俯いて悲鳴を上げるノウに、気分が良くなるシェスだ。
性根の悪さが垣間見える。

 

「ケケケ…。行くかどうかはお前がきめりゃあいいが、急にそういうもんが必要になることもあるだろ。聖水ならお前の荷物袋にいれてあるから、使いたきゃ使いな」
「シェスさん、聖水触れたの!?あっ、じゃなくて、荷物の整理いつもありがとう…」
「瓶ごしなら問題ねぇ。ま、気分はよくねぇけどなァ。なあ、ひよこちゃん。試しに剣に振りかけて切ってみるか?俺は触らないから、やるなら自分でやれよ」
「えっ、この宿、おばけでるの!?」
「いーや。少なくとも俺は見たことはねぇな~」
「…?じゃあ何を切るの?」
「馬鹿だなァ、お前。わかんないのか、お前」
「え?えっ??」

ぎしっと年季の入った椅子が音を立てて揺れた。

 

 

 

 

 

「いるだろ。――目の前に」

 

 

 

 

艶やかに嗤いながらシェスが口走った言葉に、ノウの思考が追いつかなかった。

 

「――、――……」
「ん?どうした、ひよこちゃん」

 

蜂蜜色の瞳と薄い唇がにんまりと三日月のように弧を描く。
くすくすと嗤いながら、まるで挨拶をするように気軽に親しげに言うようなことではない、たちの悪い冗談だ。
きっと目の前の麗人はノウが慌てふためくか、涙ぐむのを想定してわざとそんなことをいってからかっているのだろう。

そう思いたいのに、シェスの瞳の奥で揺れている感情はそれでもいいとでも言いたげに、楽しげに穏やかに揺れていて。

本気だった。
本気でそう思っているのが、全てにおいて鈍い、お前は鈍いと呆れながら言われることが多いノウでもわかってしまった。

 

「――――い」
「あ?」

 

それが酷く悲しくて。

 

 

 


「―――――しない」

 

 

 


すごく嫌だとノウは思った。

 

「――――――しないよ、シェスさん」

 

いつものふやけた物言いとは違うはっきりとした声に、シェスが改めてノウの方へ目を向けた。
じっとシェスを見つめ返すノウの、細い瞳の奥にある瞳孔が今日は珍しくちゃんと見える。

 

「…そんなこと、したくないよ。シェスさん」

 

透明感のある澄んだ緑が2つ、シェスのニヤついた顔を映して、やがてそのニヤついた顔がぼんやりとしたものに変わっていくのを見せつけてくる。
鏡に映らない我が身であるが、水たまりだけでなく他人の瞳にも姿が映るらしい。
ああ、なんて半端で歪なのだろうか。笑えてくる。
いや、もともと自分はいつも嗤っているのだが。

 

「……そうかよ。じゃあいいわ。これが終わったらスライム退治か猪退治でも受けるとするか」
「…うん」

 

肩をすくめて、にこりと嗤いながらひらひらと手を降る。
くるりと背を向けながらなにか言いたげなノウを背中で拒絶した。
背中に視線が突き刺さっている気がしたが黙殺する。

シェスが見つめていると困ったようにはにかんで俯くことが多いノウに逆にまっすぐ見つめ返されると、どうにも落ち着かない気持ちになったが、それが何故かシェスにはわからなかった。

わかりたくなかった。
わかってしまうのが恐ろしかった。

 

「……いてっ…」

 

考え事をしながら針を動かしていたせいか、ちくりと鋭い痛みが指先を走る。
裁縫のために白手袋を外していた色白い肌に紅い珠がじわりとできた。

 

「……!シェスさん、だいじょうぶ!?針、ささっちゃったの!?」

 

慌てた様子でノウが寄ってくる。

 

「キズぐすりあったかな!?ちょっとまってね…!!
「……いらねー」
「で、でも……」
「お前なァ、これよりひでぇ怪我した俺をみたことあんだろ。そんとき手当なんてしたか?」
「……してない」
「そういうことだよ」

 

赤い玉をぺろっとシェスが舐め取る。
針が刺さったはずの指先は、何事もなかったかのように傷がふさがっていた。

 

「俺の美貌はこの程度じゃ傷つかねぇんだよ。軟弱なお前とは違ってなァ。なにせ美しかわいい吸血鬼さまだからよ!オラ、んな変な顔してないで顔でも洗ってきな」
「………」

 

しっしっ、と手をふるシェスにノウは反応せずその場にじっと佇んでいる。
細い瞳でわかりにくいが、視線はシェスが針を指してしまった指の方に向いていた。

 

「なんだよ、その目は。なんか言いたいことがあるならちゃんと言え」

 

なにか言いたげに口を開いては閉じる様子に、言いようのない苛立ちが芽生えて棘のある言葉が突いて出る。

 

「シェスさんが、怪我をしてもすぐなおるのはしってるけど…」
「知ってるけど?」

 

そろりと日に焼けた浅黒い手がシェスに伸びる。
蝙蝠姿だろうが人の姿だろうがペタペタ触ってくるので今更咎める気はないが、なぜかまた胸がざわついた。
まだ丸みが残る手が恐る恐るシェスのしなやかで白い指を包む。
手のひらにできた剣だこが、ノウの勤勉さを感じさせた。

 

「怪我したことは、なかったことに、ならないよ」
「――、―――」

 

そう呟くノウの声は、まるで自分が怪我をしたかの声色で。
胸のざわつきが一層激しくなったのは、きっとシェスの気の所為ではない。
自分の実年齢なんてもう忘れてしまったが、少なくとも自分の半分も生きてない子供に矛盾と破綻に歪んだ精神をかき乱されるのは実に不快だった。

 

「――ひよこちゃんのくせに」
「えっ」

 

ぽつりと不機嫌に嗤えば、びくっと肩を震わせて気弱な顔でこちらを見てくるくせに。

 

「生意気なんだよなァ。オラッ」
「ぴゃーーー!!」

 

それでいて人の理からはずれた自分に近寄ってくるノウがシェスは恐ろしくて腹立たしい。
頬をぐにりとつまめば、すぐさま悲鳴を上げてバタバタ暴れ始める。

 

「うえええ、ひゃんでひゅまむの!」
「むかついたからだよ!」
「ひゅよい!」
「酷くて結構!ヒヒヒ!!」
「ううー!」

 

バタバタ暴れてシェスから逃げたノウが頬を擦りながら、恨みがましい眼差しを送る。

 

「すぐ、つまむ!もう!!…あっ、そうだ。あのね、シェスさん」

 

眉を八の字に下げて非難しようとしたノウだが、何かを思い出したのかあっという間に表情が変わった。
怒りが長続きしないノウである。

 

「なんだよ」
「料理の話なんだけどね、次、つくってみたいのがあるんだ。スープ。えっとそれからデザートも挑戦してみようと思って」
「ふーん」
「来週またお休み一日もらってもいい?」
「まあ、いいぜ」
「わー、えへへ、ありがとう。今度は一日じっくりつくってみるから。シェスさんたべてね」
「へいへい。で、結局どっちを受けるんだ?」
「うーん。いのししさんかなあ」
「ワイルドボアな。んじゃ、一眠りしたら昼に出かけるから準備しとけよ」
「はーい」

 

パタパタと顔を洗いに階下におりていくノウを見送りながらちらりと窓の外を見る。
窓の隙間から流れ込んでくる風はひんやりしていて、もうすぐ冬がくることをシェスに伝えてきた。

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