白霧の月06


(おねがい、つれていかないで)

ずきずきと痛む全身に顔を歪めながら、意識を失う直前にノウの視界に映ったのは、片方の羽根を曲げられて、鳥かごに放り込まれている白い蝙蝠だった。
最近ようやく撫でさせてくれるようになったのに、きっとまた嫌われてしまったと悲しくなる。

(ごめんね、ごめんね…)

路地裏で白い蝙蝠と過ごす些細なひとときは、優しくてあたたかい家族と暮らし慣れた故郷から離れて過ごすノウにとってとても大切な時間だった。
その時間を壊してしまったのは、迂闊にもこの路地裏のことを口にしてしまった自分だ。

(おれが、村から、でなかったらよかったのかな…)

ノウが生まれ育った村をでて港町ホルドナにやってきたのは、一年前のことだ。
まだ年若いノウが港町まではるばるやってきたのには理由がある。

「ノウ、大丈夫? 無理しなくていいんだよ?」
「うん、大丈夫。それに、おれ、街にいってみたいっておもってたから」
「出稼ぎ、にいくなんて。まだノウには早いって、私はいったのに!」
「ね、姉さん…」

村から街へ向かう馬車の停留所で、ノウを心配しているのは兄たちと姉だ。
頬を膨らませて不満をもらす姉にノウは困ったように笑う。

――そう。ノウは出稼ぎのために村を出ることにしたのだ。
家族に疎まれたわけではない。村の誰かに言われたわけでもない。
ただ、大好きな家族のために自分もなにかしたいと思っただけだ。

一番上の兄、ロウのように屈強な体を持っているわけでもない。
二番目の兄、リウのようにたまにやってくる商人と舌戦をくりひろげられるほど頭の回転も早くない。
姉のミウのようにてきぱきと要領よく農作物の管理や仕分けをすることもできない。


――ノウにこの荷物は重くてはきついだろ。俺が持ってやるから向こうで休んでな。
――えっ、さっきの行商人とどんな話をしたのかって?ノウにはまだ早いかなあ。もう少し大きくなったらね。
――料理?そんな気にしなくて大丈夫よ!全部私がやっておくから!!ノウは向こうで遊んでていいわよ。


兄たちはとても優しい。
要領が悪いノウにいつも優しくしてくれていたし、作業に時間がかかっているときは、忙しい合間をぬってかわりにやってくれたりしていた。
けれど、だからこそ。

(おれ、兄さんや姉さんのお手伝いも、できないのかな…)

自分が何もできないことを突きつけられているような気がしてしまって。
ノウのおかげで助かった!と言われてみたいと、そう思ってしまったのだ。

「港街ホルドナには母さんの知り合いがいるらしいから、当分はそこでお世話になるといいよ」
「いろいろな仕事を斡旋してくれるギルドってところがあるんでしょう?」

ホルドナには魔物退治から探しものまでいろんな雑用をこなす冒険者ギルド、商品の仕入れや発注、開発を担う商業ギルドなど、様々なギルドがあった。
また、母の知人が住んでいるらしく、しばらく世話をしてくれるよう連絡済みらしい。
結局また家族にいろいろと手伝ってもらうことになったノウは少し申し訳なく思ったが、みんな一様に気にしなくていいと微笑むだけだった。

「うん。ええと、まずは冒険者ギルドのほうにいってみるね」
「ええ!?魔物とたたかうなんてだめよ、あぶないわ!!」
「だ、だいじょうぶだよ…。えっと、薬草集めとかからやることになると思うし…」
「本当に?こわいことがあったらいつでも戻ってくるのよ?」
「うん」
「ミウはノウに甘いんだから…。まっ、でもね、いい人ばかりってわけじゃないから、困ったことがあったらいつでも連絡して」
「ああ。すっとんで迎えに行ってやるからな!」
「えへへ、ありがとう…。兄さん、姉さん」




そうして兄弟姉妹に温かく見送られたノウだったが。




「えっ…? えらいひとが変わった、ですか?」

山奥の村から遠路はるばる港町にやってきたノウに告げられたのは、ギルド責任者が変わったということだった。
引き継ぎの手続きに時間がかかっているらしく、新人のギルド登録に時間がかかってしまうらしい。
悪いことは重なるもので、母の知人も急遽べつの街に長期間いくことになってしまったそうだ。
まさか10歳前後のノウが、一人で港町までやってくるとは相手も思いもしなかったのだろう。
家は自由に使っていいと言われたが、寝泊まりするだけなら問題ないにしても、他に関してはノウ一人ではどうしていいかわからない。


「どうしよう…」

途方に暮れていたノウに受付をしていた女性が教えてくれたのは、駆け出しの冒険者の面倒をみる制度についてだった。
ベテランの冒険者と一緒に簡単な仕事を受けて、慣れてきたら本格的に登録する制度だ。
こちらならベテラン冒険者と生活することも可能らしい。

「それなら、運が良かったな、坊主」
「そうだそうだ。なにせ、この俺たちが引き受けてやるからな」

頭上から聞こえてきた声に顔を上げると、大柄な男が二人傍に立っていた。
一人は髭が伸び放題の男。もう一人は眼帯をつけた隻眼の男だ。

「なあに。俺たちはこれでもベテランなんだよ。いろいろ教えてやろうじゃねぇか」
「おうおう」

今思えば、運が悪かったのかもしれない。

二人の男がそういってやってきたときに、女性のこわばった顔をもっとちゃんと見ておくべきだったのだ。
よくわからないままに手続きを済まされ、やや強引に腕を引っ張られてギルドを後にしたノウに待っていたのは。

―おいおい、買い出しもできないのか、鈍くさいガキが!!
――人並みに仕事ができないお前を使ってやってるだけでもありがたく思え!オラ、さっさと酒を買ってこい!!

理不尽な仕打ちの嵐だった。
資金に使ってね、と家族に渡された路銀はいつの間にかなくなってしまっていた。
時々男たちが大きな剣を渡してきて素振りをさせてはくれたが、ノウの体躯にあわない武器はノウを振り回すばかりで、無様に転んで軽く腕や足を切ると下卑た笑いや怒鳴り声が鼓膜に突き刺さる。

しっかりと考えてから発言や行動をするノウは、男たちにとって鈍重で苛々したのだろう。
機嫌を損ねた男たちに突き飛ばされたり、腕をつねられることも少なくなかった。
市場の人は優しかったがなぜか気の毒そうに自分を見つめてきて、それもノウは少し苦しかった。

(おれが、どんくさいから、おこられるのかなあ…)

自分が情けなくて悲しくて、本当のことを言えば家族のもとに帰りたくなっていた。
でも、姉がつくってくれたカバンを見つめて、一番上の兄のようになりたいと思った自分を思い出し、もう少し頑張ればきっと自分もいろいろと任せてもらえるかもと、そう思ってノウはめげずに日々を過ごしていた。
雑用をこなしながら、がんばっていたのだ。

(せめて、兄さんや姉さんたちに手紙おくりたい…)

手紙を家族に送りたかったが、送らせてもらえないのもきっと自分がまだ未熟すぎるからだ。
ノウは文字をよめるが書くことはできなかったので代筆を頼むしかなく、隻眼の男はとりあってくれなかった。

(みんな手紙書いてくれるっていってたけどこないなあ。おれのこと、わすれちゃったのかなあ…)

じわりとノウの目尻に涙がにじむ。
家族からの手紙もなくてとても寂しい。

ノウは知らない。
家族からノウを案じる手紙は何通も届いているのに、ノウの面倒を見ている男たちが一切その手紙をノウに渡しておらず、適当に返事を見繕いながら金をせびっていることに。

しょんぼりとしながらノウは今日言い渡された雑用をこなしに市場へと歩いていく。
そんな理不尽な毎日に少しだけ変化が訪れたのは、うっかり路地裏にりんごが転がっていってしまった日のことだった。
薄暗い路地裏はまだ幼いノウにとっては不気味な場所で、入っていくのに躊躇したのだが、りんごをなくしたまま帰れば、男たちにまた叩かれるに違いない。

意を決してりんごを追いかけた先にいたのは、白くてきれいな体毛と蜂蜜色の瞳をもった小さな蝙蝠だった。
それから、最低限に与えられた食料や貨幣を握りしめて路地裏へと赴く時間が、ノウにとって大事なものになるのにそう時間はかからなかった。









「……今日は、ゆっくりできそう!少し早いけどこうもりさんに会いに行こうかなあ」

路地裏で白い蝙蝠を見つけてからしばらくたった頃。
今日言い渡された雑用をこなしたノウは、足取り軽く路地裏へと向かっていた。
最近自由な時間が増えた。
もしかしたら自分の手際が良くなってきたのだろうか。
割り振られる雑用にも慣れてきた気がする。

男たちは相変わらずノウに理不尽な要求をしてくるが、ノウは涙を浮かべて歯を食いしばりながらも、なんとか今日までやってこれていた。
兄弟姉妹の中で一番気弱で泣き虫なノウであるが、その実兄弟姉妹の中で一際立ち直りが早いのもノウだ。
それに、今は言葉は通じないが空いた時間に触れ合える相手がいるのも大きい。

「こうもりさん、今日も触らせてくれるかなあ」

路地裏にいるあの白い蝙蝠と過ごすのが、ノウはとても楽しみで仕方がないのだ。

「もう少しお金が溜まったら、クッキーかってあげようかなあ。クッキーだったらこうもりさんもおいしくたべてくれるかも」

にこにこと歩くノウの頬には真新しい布切れがあてられていたが、本人はあまり気にしていない。
布の下には男たちに叩かれて刻まれた痛々しい痣が残っているが、痛みはほとんどひいている。

「こうもりさんが遊んでた草、なんだったんだろう。急にべたー!ってされてびっくりしたけど、あれからあんまりほっぺたいたくないや」

昨日、ノウは草をすりつぶして遊んでいた蝙蝠をぼんやり眺めていたのだが、どうやら草のエキスが羽根についたのがいやだったらしく、蝙蝠は奇声をあげてぺたぺたと羽根についたそれをノウにくっつけてきたのだ。
最低限の服しか支給されていないノウは、頬に塗られたそれをすぐに拭うこともできず、困った顔をしながらしばらくそのままにしていた。
そのうち頬に走っていた鈍い痛みがおさまってきて、不思議に思っているノウの近くに、またどこからもってきたのか、きれいな布を取り出してノウにかぶせてくる蝙蝠。
促されるように、ノウは頬に布を当てることにしたのだった。

「こうもりさん、もしかして心配してくれたのかな?…そんなことないかあ。それじゃあ人みたいだもん。だいふく…っていったらやっぱり嫌がるかな…。こうもりさん、真っ白でまるくて、あってると思うんだけれど…」

村でも家畜に勝手な名前をつけていたノウだったが、例にも漏れず路地裏で見つけた白い蝙蝠にも名前をつけようとしていた。
どうも本人は気に入らないようで、毎回威嚇されてしまうのが現状である。

見た目からして物珍しい蝙蝠だったが、ノウが話しかけるとまるで人のような反応がかえってきたり、こちらの言葉がわかっているかのように鳴き声をあげてくるので、ついついノウはたくさん話しかけてしまう。
言葉がわかってるはずがないのに。
けれどただ誰かに話を聞いてもらうだけでも、一人港町で心細い想いをしているノウには嬉しいことだった。

「でも、本当白いこうもりって、はじめてみた」

このあたりの蝙蝠は白いのだろうかと思ったが見かけるのは黒い蝙蝠ばかりだったので、やはりあの白い蝙蝠は珍しい気がする。

「白くてて、首のまわりがふわふわしてて、ちょっとしっとりしてて、こうもりって実際に触るとあんな感じなんだなあ。かわいいな~」

のどかな村で動物に囲まれていたノウは小動物がとても好きだったので、蝙蝠の様子を思い出すだけで幸せな気持ちになる。

「まっしろなのも珍しいけど、目が金色でおつきさまみたいなのもす……っ!?」

にこにこと歩いていたノウの体ががっと乱暴に宙に浮く。
襟首を掴まれて苦しい。

「おいおい、坊主」
「………っ、あ…うう…」

浮かれていたノウは件の路地裏の入り口にたどり着くまで気づかなかった。

「そんな珍しいもんがいるなんて、知らなかったぞ?」
「なんで黙ってた?」

毎日理不尽な要求と暴力を奮ってくる男たちが、ずっとノウのあとをつけていたことに。









そのあとのことはよく覚えていない。
覚えているのは、男たちに殴られた時に木箱に頭をぶつけてしまったこと、自分のせいであの白い蝙蝠が怪我をしてしまったこと、怪我をした蝙蝠が男たちに捕まってしまったことだ。

どうか連れて行かないでと、男たちにすがりついたノウだったが、男たちの気に触ったらしく、壁へ投げつけられてしまい、激しくぶつかった身体に走った痛みに意識は徐々に薄れていった。

それからどのくらい経ったか。
全身の痛みと朧気な意識のなか、ノウは自分の身体がふわりと浮き上がる感覚をおぼえた。
あの男たちだろうかと無意識に体が震えたが、体力が残っていない身体は指先一つ動かすこともできない。

錆びた鉄のような匂いが鼻孔を掠める。
何の匂いだろうかとまとまらない思考をかき集めていたノウの頭になにかが触れた。
少し切ってしまった頭の傷をたしかめるようにそれはゆっくりとノウの皮膚をなぞっていく。
こそばゆさに身じろぎながら、それが人の手のひらだと気づいたノウは、はたしてこの手のひらは誰だろうかと首を傾げた。
男たちの無骨で暴力的なものとは比べ物にならないほど、錆びた鉄の匂いがするその手がノウに優しかったからだ。

(……、にいさん、ねえ、さん?)

風邪をひいたとき、兄や姉が心配そうに頭をなでてくれたことを思い出す。
久しぶりに感じた安堵に、ゆっくりと意識が沈んでいく。

(だれ、だろう……)

うっすらと細い瞳をあけたノウに一瞬だけ見えたのは、月明かりを透かして白く波打つ髪を揺らす、蜂蜜色の瞳を持った見知らぬ人の顔だった。


意識を手放す直前、その人の背に白い羽根が見えた気がした。









「……うう、ん…?…あ、れ…ここ、どこ…?」

薄っすらと目を開ける。
ノウが目を覚まして最初に目に入ったのは暗い室内だった。
老朽化した木造の小屋のようで、人が生活している跡は見当たらない。
あの男たちが使っていた拠点も老朽化していたが、ここほどではなかった気がする。
ぼんやりと天井をみていると、端にクモの巣が張っていた。

「え?え??おれ、ろじうらに、…あっ、いたい…っ!」

おろおろと起き上がると同時に身体に痛みが走る。
そういえば壁に叩きつけられたのだと身体を見下ろしたノウは、細い瞳を少しだけ見開いた。

「包帯…?」

何気なく触れた頭にも柔らかい布が当てられている。
誰かが怪我を追ったノウを手当してくれたらしい。
つまりこの空き家のような家もそのひとのものなのだろうか。

「えっと、えっと…。あ…」

状況が飲み込めず、きょろきょろとあたりを見回したノウは、窓辺に誰かが佇んでいることに気がついた。
窓辺から差し込む月明かりがその人物を照らす。

「…………………」

白絹のように透き通った白銀の髪と色白の肌はまるで作り物のようで。
艶やかに釣り上がった蜂蜜色の瞳が、ゆっくりとこちらへ焦点を合わせてこなければ、きっとノウは幻覚かなにかを見ているに違いないと思っただろう。

「……あ、あの」
「…………………」

恐る恐る声を掛けると、窓辺で佇んでいたその人はかくっと首を傾けてこちらを見つめてきた。
一切の表情が抜け落ちたかのような顔は、綺麗な顔立ちと相まってどこか薄ら寒さを感じさせる。

「手当、してくれたの、は、あなたです、か?えっと、ありがとう、ございます…」
「…………………」
「あの、しろいこうもり、を、知りませんか…」

相手は答えない。自分の声が小さかったのだろうか。

「おれのせいで、つかまえられて、それで羽根が、曲がって、おれ…おれのせいで…。あの、あの、だいじな"ともだち"なん、です」
「………、……」

じんわりと目尻に涙を滲ませて、俯いてぼそぼそとしゃべるノウは気づかなかった。
虚ろな表情でノウをみていた相手が、あの白い蝙蝠が時折するように蜂蜜色の瞳をまんまるくさせたことに。

「はなしはできなかったけど、おれの話きいてくれて、それで、最近はちょっとだけさわせてくれて、うれしくて、それから、うまくいかなくて怒られちゃったときも、元気が出て、もし怪我してたら、たいへんだから、あの…」

ノウはもともと話下手なほうだ。
今はあの白い蝙蝠が心配で仕方がないのもあって、いつもにまして要領を得ない話し方になってしまう。
きっと苛々させてしまっているだろうと思うと、余計にノウの口はまごつくばかりだった。

「お、おねがいします、だいふくが…」
「おい」
「ひゃっ…!?」

ずっとだんまりを決め込んでいた相手が、突如低い声で声をかけてきたことに驚いて肩をすくめる。
いつのまにか寝かされていた古いベッドの傍らにその人は立っていた。
いつ、移動したのだろうか。
その声は高めであったが男性とおもわれる声色で、ノウはそれにも驚いていた。

声を聞くまで、目の前の男が女性だと思っていたから。
流石にそれを口にだすのは失礼かもしれないと慌てて口を噤むノウだったが。

「…おい」
「は、はい」

目の前の男性は先程までの感情が抜け落ちた表情から打って変わって酷く不機嫌そうだ。

「…誰が大福だ」
「えっ、あの、だいふくは白いこうもりさんで…」

どうやら、"だいふく"という名前が気に食わなかったらしい。
だが、ノウは目の前にいる綺麗な顔立ちの男性にそんなふうによびかけたことなんて一度もない。というか初対面のはずだ。
戸惑うノウをみた男性は、胡乱げにノウを見つめると。



バサっと背中に真っ白な羽根を広げた。



「…、え…」

人の身体ではありえない白い翼がその男の背から生えている。
そこでようやく思い出す。
気を失う直前に、ノウはたしかにこの羽根を、この人をみたと。
真っ白な体毛と蜂蜜色の瞳の蝙蝠。
真っ白な髪と蜂蜜色の瞳の男。
あの羽根の造形をノウはとても良く知っている。
現実味のない共通点がノウの頭を混乱させる。

「人にダセェ名前を次から次へとつけやがって…。俺はだいふくでもめれんげでもねぇんだよ。あれぐらいの怪我ならほうっておいても治るしなァ?」
「え、え?ええ??」

窓辺から差し込む月明かりが薄暗い室内を照らしている。

「…………シェス」

薄い唇から、傲慢に親しみを練り込んだような艶気のある声がノウの鼓膜へ染み込む。

「…俺の名前は、シェスだ。ひよっこ」















男――シェス――は蜂蜜色の瞳を三日月に歪め、不機嫌そうに嘲笑ってそう言った。

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