朝を連れてきてくれたひと 後編

 

「私の名はリジェミシュカ。…だが、少々長いし、君には覚えにくいだろう。…それにフルネームだと面識の無い相手から性別を間違われることがあってな。…リジィでいい。私のことはリジィと呼ぶように。ああ、敬称はいら…いや、君にそもそもそのような概念があるかすら怪しいか」

奴隷商人との会話でも尊大だった物言いは、たとえ子供の前でも変わらないらしい。 
リジェミシュカ――リジィはサナギに一方的に言葉を投げた後、サナギの全身を改めて見つめ直した。 

「……?」 

虚ろな赤い瞳がじっとリジィを見つめ返してくる。 
サナギの肘に届くか届かない程度の緑髪は、触れるのを憚れるような汚れに覆われ酷く傷んでいる。 
ボロボロの継ぎ接ぎだらけの布は服と言うにはあまりに拙い。 
布から見えている腕や脚には無数の傷があり、顔や手足を覆う包帯は黄ばんでいて、その不衛生さに不快感すら感じた。 
どれだけ劣悪な環境だったのかはわからないが、不当な扱いを受けていたのは歴然だ。 

「…商品とまで言うのであれば、多少は小奇麗にしておくものだろう。そんなこともわからなかったのか、あの男は?」 

サナギが特殊だったのかもしれないが、あの場にいた奴隷の一部は同様の扱いを受けていたように見えた。 
そのことにリジィは不愉快そうに眉を寄せる。 
ただ、そこにあるのは正義感でも憐憫の情でもなく、客に汚れのついた商品を売ろうとする商売人など言語道断だと怒りを感じていただけだ。 
まあ、奴隷商人はサナギを売るつもりはなかったようだが。 

「こんな薄汚れた状態のままの君を私は連れ歩きたくはない。となれば、まずは洗浄と衣服の新調からか…?」 

宿の裏をかりて簡単に水洗いをすることにした。 
あそこには井戸があるし、水浴びをさせるにはいいだろう。 
宿の一階へと降り、亭主へと声を掛ける。 

現在リジィが泊まっている宿の亭主は、どちらかというと無愛想で客に積極的に話しかけてくるようなタイプではなかったが、最近泊まっている身なりの良い客が突然ボロボロの子供を連れて返ってきたことについては少々驚いたのか目を見開いていた。 

裏手を借りるぞとチップを置いてすたすたとサナギを連れていくリジィを無言で見送る亭主。 
必要以上に客に干渉してこないこの亭主は、他人と関わりたくないリジィにとっては勝手がよく、普段はすぐ宿を変えるのだがこの宿はそれなりに長く利用している。 

井戸にたどり着き水を汲もうとしたが、水の入った木桶は力仕事に向かないリジィの身体には厳しく、腕が痛くなるのでサナギに水を汲ませる。 
サナギは木桶を持ったままじっとこちらをみるばかりで一向に水をかぶろうとはしなかった。 
次の指示を待っているのだと理解したリジィは微かにまた眉根を寄せたが、一つ長い息を吐くと、 

「頭からその水をかぶれ。目は閉じるように。水が流れ落ちたら目を開けろ。それを三度繰り返せ」 

一言、一言区切るように指示を出した。 

ある程度汚れが取れたのを見計らって、乾いた布で水分をとっていく。 
サナギは一切抵抗せずおとなしくしていた。 
一方的に水をかけられ放置されたことはあったが、こうして布地にくるまれるのは初めてだ。 

相変わらずリジィの表情は冷たかったが、サナギの身体を拭く手付きは奴隷商人よりずっと柔らかく、サナギはじっとしたまま少しの間目を閉じてしまう。 
そこに薄っすらと感じた何かの名前をサナギは知らない。 

水浴びを終えたサナギを連れて次は服をと考えたリジィだったが、子供の服をどう調達していいかわからず、自分の服をかぶせるようにサナギに着せはじめた。 
リジィの背丈は180センチほどあり、サナギの背丈はその半分あるかないかだ。 
つまり動く布の塊のような状態になっているのだが…。 
そのままサナギを連れ出そうとしたリジィにさすがに亭主も見かねたのか、簡素な作りのチュニックとズボンを渡してきた。 

「さすがにそれはどうかと思いますよお客さん…」 
「む…。このあとサイズが合う服を探しに行くところだった」 
「でもそんな歩き辛い格好の子供を連れては道中大変でしょう?」」 
「…それもそうか。いくらだ?」 
「親戚の子供が入らなくなった服なんで代金はいりませんよ」 
「…、…そうか」 

あまり借りを作りたくなかったが仕方がないと言った顔で、リジィは亭主に服の代金には満たない額のチップを渡す。 
他に必要なものは明日買えばよいかと、少し早めだがそのまま食事を摂ることにした。 
サナギの分も併せて適当な料理を注文し、カウンターの椅子へと腰を下ろす。 
がやがやしたなかで食事を摂るのが苦手なリジィは少し時間をずらして食事を摂ることが多かったので、亭主は慣れた様子で厨房へと消えていった。 

「…? サナギ、なぜ地面に座り込んでいる?」 

亭主に料理を注文し、一息ついたリジィがサナギの方を見やると、サナギはなぜか椅子ではなく床に座っていた。 

「…、…。しょく、じ」 
「しょくじ? ああ、食事か。そうだ。今から食事を摂る。適当に頼んだが食べれなければ食べなくてもよいし、食べたければ食べるがいい」 

食事という言葉はわかるのか。と内心思いながら、リジィはサナギが席につくのを待っていたが、サナギが動く気配はない。 

「…なんだ? どうした」 
「…、しょくじ、ここ」 
「床の上だが?」 
「ざ、んぱ、ん」 

サナギの新しい持ち主になったリジィは食事だといった。 
サナギにとっての食事は、硬い野菜の芯や肉の切れ端、冷めた薄いホコリが入ったスープなど、残飯が無造作に入れられた大皿に手を入れて食べることだったので、リジィの食事が済んだら自分にも食事が出るのだろうと思った。 
だから大人しく座ってその時間をまたなければならないと、じっとリジィの方を見つめる。 

今日は何も壊してないし、何も潰していないのにご飯がでるのはなぜだろうかとぼんやりと考えながら。 

「…、は…」 

サナギが発した断片的な内容は聡いリジィが理解するには十分で、一瞬冷然としていた表情が動揺に歪む。 
だがそれも一瞬のことで、すぐにきゅっと眉根を寄せたかと思うと、自らが座っている椅子の横を軽くトントンと三回叩いた。 

「…?」 
「座れ」 

断定的な口調を命令と捉えたのか、サナギはおとなしくリジィの隣へと腰を下ろす。 
栄養の足りていない未発達の身体は椅子の高さに苦戦するかと思えたが、人ならざる身体能力の賜物なのかすんなりと椅子の上にサナギの身体は収まった。 

「……」 

サナギは伺うようにリジィを見つめる。 
やはり自分の分の食事はないのだろうか。 
確かに今日はまだ何も壊してないし、何も潰していないので当たり前なのだろう。 

「今の主は誰だ?」 
「りじぃ」 

ぽつりと問いかけた言葉に、よく訓練された獣のような反応速度で答えが返ってくる。 
まだ一度しか略称を教えていないのに即答され驚いたがそれを顔に出さずに頷く。 

「そうだ。主が変われば環境が変わる。環境が変われば決まり事も変わる」 
「…?」 
「…私の話し方は難しいか。まあよい。食事についての決まりごとが以前君がいたところとは違うということだ。以下の述べる三つを守れ」 

―屋内で食事を摂るときは椅子に座ること。 
―道具を使って食事を摂ること。 
―しばらくは私を手本にすること。 

一つ一つゆっくりとサナギに言い聞かせる。 
わからなければ聞くようにと言葉を添えて。 

「できるな?」 

サナギがコクリと頷いたので満足そうに頷く。 
ちょうど料理ができたのだろう、亭主がリジィとサナギの前に料理を並べにきた。 
並べられた料理は作り立てで、おいしそうな匂いが鼻腔をくすぐってくる。 
それはサナギにとってかつてみたことのないご馳走として映り、本能が空腹を訴え、きゅるりと空っぽの胃が鳴き声をあげた。 
木彫りのスプーンをリジィが手にとって食べ始めたのをみて、サナギもゆるゆると同じようにスプーンを握りしめたのだが、その時。 


バキィッ!!! 


木彫りのスプーンが真っ二つに弾け飛んだ。 
よくある有り触れた木のスプーンだ。 
本気でへし折ろうと思えば出来ないことはないだろう。 
ただ、子供が握ったぐらいで壊れるものでもない。 

「……」 
「……」 
「……」 

粉々になった木のスプーンを見つめるリジィと宿の主人。 
きょとん、っと壊れたスプーンを持ったままじっとしているサナギ。 
亭主がリジィの方を何かいいたそうに見つめる。 

「……亭主。そのような目でこちらをみるな。弁償はする。…サナギ」 
「…、……」 

ふるりとリジィの方へ視線を向けるサナギは相変わらず虚ろな表情を浮かべていた。 
自分が何をやったのか理解していないのだろう。 

「…力加減も学ばなければならんな」 

リジィは眉間を指で抑えて呻いた。 



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それから季節がめぐり、サナギがある程度リジィの言うことが理解できるようになった頃。 
本格的に言葉を教えられるようになった。 

自分のことを言い表すときは「僕」、肯定するときは「はい」、否定するときは「いいえ」。 
この三つだけでもずいぶんと会話が成り立つようになった。 
一人称については「俺」「私」など他にも色々あるらしいが、とりあえずは「僕」で落ち着いた。 

また、外には「朝」「昼」「夕方」「夜」というものがあると教えられ、空の色が変わっていくのを目の辺りにしたサナギが初めてその移り変わりを見たときは、その後何日か窓からじっと変わりゆく空を一日中眺め続けていたぐらいだ。 

夕食が終わり、就寝までの手持ち無沙汰な時間は言葉や文字の学習を行うのがここ2人の日常になっていた。 
今日は朝の挨拶を練習するらしく、こうして宿の一室で練習をしている。 

「おはよう」 
「…ア、ヨウ」 
「お、は、よ、う、だ」 
「…、アア、ヨ」 
「まだ、難しそうだな」 
「…、う」 
「今日はこのあたりにするか。一気に詰め込んでも仕方あるまい」 

リジィはサナギがうまくできなくても怒ったりしなかった。 
不真面目に取り組んでいるならまだしも、サナギは真面目に取り組んでいるからだ。 
人には学習のペースがある。 

時計を見たリジィがそろそろ寝る時間だ、とサナギに告げ室内のランプが消される。 
相部屋を嫌っていたリジィが、サナギに関してはあまり気に留めないようになり、ベッドがふたつある部屋で共に就寝するのが当然になったのはいつだったか。 

「では、私は寝る。君も早く寝るように」 

サナギに寝間着を着せ、リジィは早々とベッドへと身体を横たえた。 
まもなくして、すう…っとリジィが寝息を立て始めたのを確かめると、サナギは寝室を出て扉を静かに閉め、廊下に座り込んだ。 
他の客はもう寝静まっているのだろう。廊下は暗く静かだ。 

「お、あ…」 

「おあよ、ア…」 

「ア、よ、ウ…」 

小さな声で一つ一つ音を出す。 
リジィがつぶやいた音を何度も頭に反芻しながら。 

サナギが一つ言葉を覚えるたびに、一つ言葉を発音できるようになるたびにリジィは少しだけ表情を崩して褒めてくれた。 
また褒められたい、という欲求がそこには確かに芽生えていたのかもしれない。 










「…ん」 

小鳥が外でさえずる時刻にリジィが目を覚ますと、サナギが隣のベッドで静かに寝息を立てていた。 
普段であれば自分より先に目を覚ましてベッドの傍らに立ちすくんでいることもあるので珍しい。 
ちなみに始めは驚いたが、今はだいぶ慣れた。 

体調を崩しでもしたのだろうか。 
声を掛けるかと思っていた矢先、ぱちりとサナギの目が開き、くすんだ赤色がリジィを見据える。 

「起きたか」 

コクリと頷きが返ってくる。 
普段と変わらない様子に問題なさそうだなと判断し、リジィはサナギから目を離そうとした。 
そこにおもむろにサナギの口が開く。 

「オはヨ、う」 

ぱちっとリジィの青い瞳が瞬く。 
サナギの口から発せられたのは、リジィが昨日教えた挨拶だった。 
発せられた音はたどたどしかったが、昨日よりずっと上達しているのがわかる。 

「…ほう」 

リジィの感心したような声がサナギの頭上へと降ってきた。 
また、褒めてもらえるだろうか。とリジィの青い瞳をぼんやりと眺めていたサナギの目に飛び込んできたのは。 


「ふ…、何だ、やればできるではないか」 



―常に不機嫌そうに寄せられていた眉が緩やかな曲線を描き。 

―霧がかったような冷たい青い瞳が細められ。 

―少しだけ首を傾けて浮かべたそれは。 



「勤勉な者は、好ましい」 


気が抜けたような、穏やかな笑みだった。 


「――、―――」 


笑った。 


普段、でかけているときもリジィはゆったりと笑っていることがあるが、その笑顔はどこか透明で、光が届かない深海のように冷え冷えとしたものだった。 
相手の心の機微に聡いものがみれば、薄ら寒さを感じるような、そんな嘘くさい笑みだ。 
けれど今、サナギにむかってリジィが浮かべた笑みは、朝、差し込んでくる陽のように柔らかいもので。 

「おはよう。うむ、ちょうど食事を撮ろうと思っていたところだ、君も食べるだろう?」 

機嫌が良さそうに語りかけてくるリジィに、コクリと頷く。 
満足げに階下へと向かう後ろ姿、サナギはてとてとと追いかけた。 
一歩下がった位置を保ちながら、たどたどしく言葉を紡ぐ。 
覚えたばかりのその言葉を。 

「おはよウ…、お、はヨう」 
「うむ」 
「おハよう、オはよウ…」 
「うむ」 

サナギの凝り固まった表情筋と淀んだ赤い瞳はそのままだったが、覚えたての言葉をリジィに向けて必死に紡ぐ様子は、親鳥のあとを必死についていく雛の鳴き声のように廊下に響く。 

「そんなに気に入ったのか? 変わっているな」 

そういうリジィの表情から先程の柔らかい笑みは消えていたが、青く冷たい瞳は少しだけ緩んでいた。 

「りじぃ、おはよウ」 
「うむ。おはよう――、」 








「サナギ」 






―ぱちりとサナギは目を開けた。 

ふかふかとは言い難いが、石の床よりはずっと寝やすいベッドの中だということと、定宿としている「狭間の追憶亭」の自室で寝ていたのことを思い出す。 
窓のカーテンを開ければ柔らかな日差しが降り注ぎ、朝が来たことをサナギに告げた。 
眩しさに赤い瞳を細める。 

夢を見ていた気がする。詳細はもうぼんやりとしているが。まだ言葉を覚える前の頃の夢を。 
夢の中よりも伸びた手足を動かし、室内にある鏡の方へと歩み寄る。 
部屋にある鏡に映る姿は10代前半の少年の姿。 

「サナギ、起きているか?」 

コンコン、とノック音と自分を呼びかける声が聞こえ、ぱたぱたと扉に近寄り鍵を開ければ、視界には青が広がった。 
見上げれば、昔よりは近い場所で青い瞳と視線が交わる。 

「リジィ」 
「そろそろ朝食の時間だ。ともに食べるだろう? 他のものも起きているだろうからな。まあ、起きてこないものもいるかもしれないが」 

サナギは現在、「狭間の追憶亭」という宿で、リジィをはじめ、四人の仲間とともに「巡る渡り風」というパーティで活動している。 
思い浮かべるのは仲間の二人だ。 
夜にいきる吸血鬼のシェスと夜遅くまで酒を嗜んでいるメロディアは朝寝ていることも多い。 

「今日は急ぎの依頼などもない。何時に起きてこようが問題はないだろう。食事をとったら出かけるぞ。良いな?」 
「うん」 

サナギの返答に満足気に頷くと、リジィは階下へと歩き始める。 
自分が買い取られたあの頃より柔らかい表情を浮かべるようになったリジィの方へと歩を進める。 
それに気づいてリジィが目元を緩ませるのを見て、サナギも少しだけ目を細めた。 

リジィは昔に比べてよく笑うようになったが、それでも他人に対して浮かべる笑みはやはりどこか作り物めいていることが多い。 
今、リジィがこちらにむけている笑みは自然なもので、それに対してサナギはじんわりとしたあたたかさを覚える。 

いまだ感情の起伏は少なく滅多に表情筋が動くことがないサナギは、初対面や交流の少ない相手から見れば無愛想で得体の知れない気味の悪さを感じられることも少なくない。 
だが、リジィはもちろん、巡る渡り風のメンバーはそれに対してまったく気分を害さず、微かに変化する雰囲気を感じ取り、笑顔を向けたり心配してくれるのだ。 

今も、端からみると無表情で何も考えていないように見つめてくるサナギに対し、リジィは気分を害した様子もなく機嫌よく話しかけてくる。 
リジィの耳に装着された羽飾りが、機嫌の良さそうな持ち主に呼応するようにふわふわとゆれていた。 

買い取られて間もない頃に、サナギが怪鳥と相対しながら毟り取った羽根をリジィは手を加えてこのようにずっと大事にしてくれている。 
それを確認する度、錆びついてひび割れた歯車が油をさされて稼働を始めるかのように、もう動くことはないと思っていた何かがかすかに動くのだ。 



―ヒビの入ったカビの生えた皿は、ヒビの入っていない清潔な木の皿に。 

―皿の置かれる場所は、血生臭い石の床から、木のテーブルの上へ。 

―野菜の芯と冷めきった塩味のスープは、ぽかぽかと温かいポタージュに。 



―石の床の上で蹲るように一人で食事をとっていた。 

―二人で食事で取るようになった。 

―二人は六人になった。 

―「おはよう」とつぶやけば、「おはよう」と五つの声がかえってくるようになった。 


赤と灰色しかなかった世界に、色が増えていく。 

焦がれた青色がそばにあり、弾むような桃色の歌声が聞こえ、白い羽音と共に黄色のバターと卵の匂いが鼻孔をくすぐり、黒く塗りつぶされていた頭上には白紫に輝く星があることを教えてもらった。 

夜しかなかった世界に遠い地平線の彼方から朝日が登るように、暗がりで見えなかった色々なものに光を当てられて造形を把握できるようになった。 

あのとき眼前に広がった青に手を伸ばさなかったら、きっとこの世界に自分はいなかったのだろう。 




あの青が、この青が。自分に朝を連れてきてくれたのだ。 




「…、リジィ」 
「ん? どうした、サナギ?」 

控えめに、くいっと袖をひくと、気分を害する訳でもなくリジィのやわらかい眼差しがサナギに注がれる。 

「…おはよう」 
「おお、うむ、おはよう!」 






日が差し込むことがない薄暗い地下と赤黒い染みが飛び散る黒い壁が最初。 








次の世界は血なまぐさい闘技場。 







そして今は、 











朝を連れてきてくれたこのひとが、僕の世界。

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